スイミング・プール(2003)

スイミング・プール [DVD]
Swimming Pool (2003)
編集長に勧められて彼の南仏の別荘へ気分転換に訪れたサラはロンドンとは違った太陽と緑と空気に恵まれた開放感に多いに創作意欲を刺激される。そこへ突如現れた編集長の娘ジュリー。彼女は毎晩男を連れ込んでは騒ぎ立てサラの神経を逆撫でする。ある日ジュリーを見ていたサラはふと頭にひらめいて・・・・

注意:ネタバレあり

監督:フランソワ・オゾン
出演:シャーロット・ランブリング/リュディヴィーヌ・サニエ/チャールズ・ダンス/ジャン=マリー・ラムール/マルク・ファヨール/ミレイユ・モセ

今回もやられました。
まさかこういう結末を迎えるとは・・・・この辺りはネタバレに抵触するので最後に再び。

フランソワ・オゾン監督でストーリー以外にもうひとつ注目すべきは毎回これ以上無い適材適所の絶妙な配役。今回はシャーロット・ランブリングが成功したミステリー作家のサラ・モートンを、リュディヴィーヌ・サニエが編集長の自由奔放な娘ジュリーを演じています。2人とも彼の作品は初めてではありません。2人は見事にその「陰と陽」「老いと若さ」「神経質と自由奔放」など相反するそれぞれの役所を表現しています。
とくにシャーロット・ランブリング演じるサラ・モートンがジュリー(リュディヴィーヌ・サニエ)を見る時のその目つき。時々見せる邪悪な微笑み。への字に曲げた口元。もう目が離せません。
そうやって観客を魅力的な登場人物達に釘付けにしておいて水面下で徐々に伏線を張り続け最後にさりげなく観客を裏切るのがフランソワ・オゾン監督の手口と言えるかもしれません。今回もその罠にはまりまくりでした。

この辺からネタバレかな。

最初は突然現れたジュリーにもうこれは嫉妬ぢゃないの?ってくらい苦虫噛み砕いた顔で睨みつけるサラですが、それが徐々に悪魔のような不適な微笑みでジュリーニ近づいて彼女のことを根掘り葉掘り聞き出すサラ。ある日夜中にサラが気になっていた飲食店のウェイターのフランクを連れて帰ったジュリー。酒を飲みマリファナを吸いながら夜更けまで3人でグダグダし、サラが寝室へ引き取った後に事件が起こります。この辺でやっとミステリーらしくなるのですが、結局最初から観客は監督の術中に嵌っててだまされてるんですね。
事件の処理をしてジュリーと分かれたサラはロンドンへ戻り新作を編集長に見せるが断られます。「そうだと思った。他で出しちゃった。」といいながら既に出版された新作を編集長にプレゼントして出版社を後にするサラですが、その時に「編集長の娘」とすれ違います。
ここ重要。
ここで観客は「え?????」って頭の中が「?」で埋め尽くされる事態に陥ります。
「全然美人ぢゃないぢゃん!!!」「僕のジュリーはもっとたれ目と日に焼けた素肌が素敵だったぢゃん!!!」
だまされた観客は頭の中が整理出来ないままラストシーンを見せられます。
あの後ろ姿は誰??????
もうやられちゃいますよね。
リュディヴィーヌ・サニエの胸に気を取られてるうちに監督の術中にしっかり嵌ってしまってます。
この作品は多分見る人に寄って解釈が違うんでしょうけど、僕の解釈は「全部フィクション」
要は編集長に見せた新作「スイミング・プール」の内容がそのまま映像になっていたんぢゃないかと。実際に会ったことの無い編集長の娘を出演させ、存在しない殺人事件まで用意して。サラはおそらく編集長へ新作を届けた帰りに初めて彼の娘に会うんでしょう。編集長が娘のことを面と向かって話したのは南仏へ行く前だけですから。南仏に着いたサラは編集長へ電話で「色々とネタを思いついてそれを暖めている」と言っています。そのうちのひとつのネタが南仏の別荘で繰り広げられたストーリーだったのでしょう。「私小説的な」というのは自分が出演しているからだとすると、映画全編が彼女の創作だったというのが一番しっくり来るかな。と。というのもどうも殺人事件の隠蔽をする理由が見当たらないから。ミステリー作家が殺人事件に遭遇するのは千載一遇のチャンスでメディアも取り上げる絶好のネタだと思うけど、わざわざ発覚しない様に手を汚してまで掩蔽する必要は無いと思うんです。そもそもジュリーは初めて会っただけの言わば見ず知らずの他人なんだし。だとするとジュリーが別荘に現れたところから全て、もしかしたらそれより前から全てフィクションだったのではないかな?少なくともジュリーはフィクションぢゃないと最後に現れた娘とは別人なんだし。
そういう訳で見事にだまされた訳ですが、見所満載なよい映画だと思います。
見所満載だから最後までだまされちゃうんだよな。


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