鑑定士と顔のない依頼人(2013)

鑑定士と顔のない依頼人 スペシャル・プライス [DVD]

La migliore offerta (2013)

ヨーロッパの映画は面白い。特にこのブラック感は秀逸。

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ/ジム・スタージェス/シルヴィア・ホークス/ドナルド・サザーランド/フィリップ・ジャクソン/ダーモット・クロウリー/キルナ・スターメル/リア・ケベーデ

だいぶ前に録画していたので、どんな映画だったかすっかり覚えてなかった。でもちょっと変わったラブ・ロマンスだと記憶してた。

実際、潔癖性で人をあまり信じていない主人公のヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)が、姿の見えない依頼人のクレア(シルヴィア・ホークス)に少しずつ惹かれていくストーリーに違和感を感じなかったし、このままハッピーエンドで終わるのかと思って見てた。

改めて調べてみたら、ジャンルは「ミステリ」だし、英語を使っていたのに制作もイタリア。なるほど、ヨーロッパお得意のミステリ手法なわけだな。最初からミステリと思って見ていたら、「いつ来るか!」と思ってみれたと思うけど、すっかり油断してみてたから最後のどんでん返しには驚かされた。

絵画をはじめとする美術品鑑定士が主人公な割には、美術品自体のウンチクは全くなく、舞台装置の一部のようにさらっと描かれていて、ストーリーはしっかりとヴァージルとクレアの二人に焦点が定められています。ヴァージルの唯一の友人と言っていいロバート(ジム・スタージェス)や長年のパートナーのビル(ドナルド・サザーランド)は、二人の関係には立ち入ることなく物語の背景のように描かれているのもポイント。

全ては最後のために入念に計算されたミスリーディング。まさかバーにいる女性(クレジットでは女の子になってたけど)がキーパソンだったなんて、ミステリ好きでもロマンスだと思って見てたら気付かない。当然ながらビル(ドナルド・サザーランド)だって友情出演なんかぢゃありません。あんな濃いキャラがただ出てるわけないよね。見終わった後、『スティング』や『オーシャンズシリーズ』、テレビドラマだと『レヴァレッジ』なんかが頭に浮かんだ。大掛かりで秀逸な詐欺の映画でした。

とはいえ、イタリア映画だとわかると最後の印象もちょっと見方が変わる。イギリス映画ならヴァージルはもう気が狂って何もわからなくなるか死んぢゃうだろし、フランス映画なら誰も思い出さずに一人寂しく終わるだろう。けどこれはイタリア映画。先の両国に比べて「愛」を大切にする国だと思う。勝手なイメージだけど。

そう思うと「お一人ですか?」と聞かれて、少し間を置いてから「連れを待っている」と答えたのは、きっと本当に待っていたから。迷ったのは一度騙されたから。でもやっぱり「愛」を信じたんではなかろうか。作品中に何度か出てきた「贋作の中にも真作が潜んでいる」という言葉がここで光ってくるのではないだろうか。一連の仕掛けが全て「贋作」なのだとしたら、潜んでいた「真作」こそがクレアの愛だと思いたい。


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